夏 天 果 books information                   
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 完全、今日は自主休学だ。もう今さら間に合わない。
 枕元の目覚ましを押しやると、だらしなく寝転んだまま、じっと天井を眺めた。古いアパートの天井は木目のある板が張ってあって、ものすごく日本風だと思う。イタリアの城の天井は花や鳥が匠に描かれていたし、その後の一人暮らしは間借のアパートだったり、安い地下室だったりしたけれど、どこも木の板なんてトコはなかった。
 携帯は沈黙している。もちろん、どこからも掛かってくる予定なんてない。自分が連絡したい人に連絡するためだけにあるようなもの。それが夏休みの間は、頻繁に掛かってきた。愛しい人から。最後の何日間かは、本当に連日電話があった。
「ご、獄寺君! 宿題教えて……」
 切羽詰まった響きから始まって、今日は何時に来る? 暑いから気をつけてね。化学のレポートどうしよう。実験って何をすればいいかな?
 十代目はこの俺を頼ってくれた。
 それは誇らしく、かつ、お役に立てる事があるんだという自負と喜びに繋がった。話を聞きつけて山本も一緒だったのは気に食わなかったけれど、ありがとう獄寺君、助かったよという笑顔を見れるだけで、幸せだったのだ。
 そんな蜜のような日々もついに終わってしまった。九月三日の始業式は午前中で終わるからと、出かけていった。十代目も久しぶりの学校に、あーもう始まっちゃったねえ、と残念そうにされていた。
 そして学校でおはよう、またね、の日々が始まった。暑い教室内にうんざりしたし、律儀に時間割にそって始まる授業にも、飽き飽きしていた。でも苛々の原因は暑さでも退屈さでもなく、多分、戻ってしまったような気がして、たまらないのだ。夏休み前の日々と全く一緒、学校で十代目と会って、話して、また明日と家に帰る。夏休みの最後の一週間ずっと、朝から晩まで一緒で、もうダメだ、終わらないよ…と涙目の人を励ましては、頑張りましょう! 俺がいますから!と、そんな風に笑っていたのだった。
 月曜日の日常の始まりから四日目に耐え切れなくなって、ダウンとは。自分ながら情けない。
 そうは思うものの、起きあがる気になれない。
 全て片付けた宿題も、提出すらしていない。カバンに入れるのがおっくうで、そのままにしてある。
「あーくそ…。学校なんて、なくなればいい…」
 煙草をくわえながら、ごろりと横を向く。首の後ろに手を置いて、ため息を吐いた。
 でもそうすると、もう毎日お会いすることも出来ないのかな。
 俺が十代目に毎日会えるのって、学校があるからなんだよな。
「くそ、くそ…」
 前進したような気がしていたのだ。十代目に認められ、頼られ、ずっと傍に置いていただけるような手応えを感じていたのだ。それが夏休みの終わりと共に消えてしまった。
「十代目……」

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